警察がクレジットカード会社大手3社に、FC2での決済をできないようにする要請をしたそうです。このニュースは朝日が先んじたようで、読売は数日遅れて報じています。
要は「FC2は無修正動画出しててケシカランが、アメリカの会社で規制できないので、買いにくくしてしまえ」ということなのでしょう。
たしかに無修正動画事案では最近、摘発、逮捕事案が増えているように思えます。
- わいせつ動画投稿、収益8200万円か 会社役員逮捕 警視庁(産経、2022/11/14)
- サイト「FC2」で販売ランク3位の男を逮捕 無修正動画陳列容疑(朝日、2022/5/19)
違法動画の作り手をのさばらせているのはいけないと思いますが(だって違法なんだし)、だからといって、クレカの決済をできなくするようカード会社に頼むのは、筋が違うのではないでしょうか。横暴だとも思います。カード会社、決済会社の売り上げを減らすことと、違法動画を流通させないことは別問題だからです。
JCBが使えなくなって……ビデオは一気に半減、JCBの売り上げも奪っているはず
警視庁は6月ごろ既に、ビザ、マスター、JCBに中止を要請しており、このうち日本の企業であるJCBは取り扱いを止めたようです。その影響として、
同庁によると、取引中止を求められた取次業者の一つが今年7月14日にFC2との契約を解除したところ、同日は約75万本あった国内の動画販売数は翌15日に約39万本に半減。その後も断続的に複数の業者が取引をやめ、8月20日には約30万本まで減った。
朝日新聞
だそうです。
多くのユーザーが困っているようで、こういうりクエストも出されています(FC2ライブ)。
ただ依然、ビザとマスターは使えます。このあたり、日本の会社ではないからでしょう。

こうして、警視庁は日本のクレカ会社であるJCBの売り上げを奪ってしまったわけです。今どき、クレカの保有枚数は一人当たりで3枚弱ですから、JCBがダメならビザかマスターを選べばいいわけですからね。JCBの売り上げをビザやマスターにつけてあげた、とも言えそうです。
なぜ警察がクレカ会社に「FC2での決済止めて」なんて言えるのか?
そもそも警察が何を根拠に要請したのかということについては、メディアの記事では明らかになっていません。この点について、このnoteでは「犯罪による収益の移転防止に関する法律」ではないかと指摘しています。
警視庁がFC2のクレカ決済中止を求めた要請の根拠法令を調べてみた。
バーチャルAV女優・Karin 2022年11月22日 01:20
よく調べてあって「そもそも」のところを整理するのによいと思います。
何がいけないのかというと違法動画を撮ってるヤツらのやり口では
クレカ会社に決済取引中止を求めるのが筋違いだとすると、この問題にはどう対処すべきなのでしょうか。悪いのは、違法動画を作って流している制作者なので、行うべきは、違法動画の制作者に対する規制だと思います。
違法動画の作り手ではなく、流しているFC2というプラットフォームはどうかというと、これは米国の会社ということもあって手は出しづらいでしょう。
ただ少なくとも日本のFC2コンテンツマーケットで違法動画を作っている制作者の大半は日本在住の日本人でしょうから、ここに対してできることがあるはずです。
そもそも違法な動画を作っているわけですから、そこを罪に問うべきでしょう。クレカ会社が悪いわけではない。
ちなみに11月逮捕の8200万円事案の詳細はこれに出ていますが、どれだけひどいかが分かります。
〈FC2違法動画投稿で逮捕〉出演女優は「無修正とは知らなかった…」 なんちゃってAV監督/男優“ハメハメジャッキー”こと角谷貴史容疑者(50)のヤバすぎる個撮の手口(集英社オンライン、2022/11/16)
ここにあるやり口を個人の制作者すべてがしているわけではないでしょうが、実際には出演する女性に嘘をついている制作者がきっと多いのだろうと思います。
たとえば、公開・販売をすることを言っていない、勝手に撮っている(盗撮)、修正するといっておいて無修正を出す……。そういうヤカラは少なからず存在すしているだろうと思います。
兵長は何も、AV新法のようなガチガチ規制がいいとは思っていません。一方で、修正・無修正については、正直あまり「無修正ケシカラン」とは思っていません。
いけないと思っているのは、出演者に断らずに撮影(盗撮)したり、許可なく顔出しや無修正を出したりする行為です。動画自体の内容がどうこうというより、関係者の錯誤につけこむような作り方を断罪すべきではないかということです。
たしかにモザイクアリだと売れないのかもしれないが……
個人でアダルトな動画を撮って公開し、販売収益を得ること自体は悪くないと思います。
ネットに無修正動画がこれだけ流通している中で、モザイクの入った修正動画なんて売れないよという反論はあるでしょうが、売れないからと言ってやっていいわけではないのは当然です(そうした中でどうやって売れる作品にするかを考えるのが制作者・クリエイターの仕事なのですが、まあそもそも違法動画の制作者はクリエーションがしたいわけではなく、ヤリたい、儲けたいということなのでしょうから、こうして指摘は響かなさそうです)。
警察も違法動画制作者への見せしめのために、目立つ制作者を逮捕しているのでしょうが、このあたりはもっと厳しく取り締まってもいいのではないでしょうか。
複数パーティー(乱パ)も事件化されていて、あちらもあちらでいろいろ問題はありますが、動画は一瞬で拡散して残り続け、アダルト・アングラに興味のない人の目にも届く恐れがあります。好きで出ている女性はともかく、騙されて出た女性が不憫でなりません。違法動画なんて撮って公開しようなんて思えないようにできたらよいのに、と思います。
思うだけで、「これをやれば一気に解決する」という明解な解決策はないのですが、ただできること、やるべきことはたくさんあり、それを積み上げる余地もまだあるのではないかと思います。少なくとも、今回報道されたクレカの決済取引中止要請は筋違いであり、横暴な策ではないかなと思いました。