梅毒患者が増えているというコラムを写真週刊誌の佐々木チワワさんの連載で読んだような気がするので、ちょっと調べてみたところ、実際増えているようで、2013年ごろは週当たりの報告数が10件程度だったのに、22年のいまは男性異性間が100件、女性が80件程度にまでなっています。
長期のトレンドも増加傾向にある
下のグラフは2013年の第1週から始まり、2022年の第23週までの週当たりの報告件数がプロットされています。上のグラフが男性異性間、下が女性です。なお男性同性間のグラフもあり、そちらもゆるやかですが増えています。赤い線は13週移動平均線です。
特に伸びているのが2021年に入ったくらいからのようです。
四半期ごとの届け出数の推移をみると、2021年第2四半期が1857件だったのに、21年第3四半期以降、2189、2364、2591件と順調に(?)増え、22年第2四半期には3033件となっており、1年で6割以上増えています。
年代別でみると男性は「何歳だろうがかかっている」が、女性は「ほとんど20代」
ちなみに男性・女性それぞれ何歳くらいの人がかかっているかというと、男性は20歳くらいから40代くらいまで同じくらいいて、50代後半で落ち込んでいるものの、60代以上になるとまた件数が増えています。
男性はどの年代もまんべんなく梅毒にかかっているということのようです。当然、20代よりも40代、50代のほうが人口が多いので、セックスを定期的にしている人が若い人より少なかったとしても、人口が多い分、罹患者も増えてしまうのかもしれません(そもそも若い人が草食化してあまりセックスしていないだけかもしれませんが)。
これに対して、女性でかかっているのはほとんど20代です。
この傾向は梅毒という病気の特性なのでしょうか。それとも時代の特徴なのでしょうか。数十年前の同じグラフを見て比べてみたいところです。
都道府県別の件数ワースト10はここ
都道府県別でみると、当然多いのは人口の多い東京都です。下のグラフは、届け出件数の多い10都道府県です。東京のほかには、大阪府、愛知県、神奈川県、福岡県、埼玉県、北海道、広島県、兵庫県、千葉県です。
東京の部分だけ補足すると、21年第2四半期に600件弱だった届け出件数が1年後には900件弱となっています。1.5倍程度です。
ここだけみると、東京の伸びは全国平均と比べると決して高くないのかもしれません。というのも、さきほど四半期ごとの全国の届け出件数の推移のところで、「1年で6割以上増えている」と指摘したからです。誤差の範囲ともいえるかもしれませんが、東京は6割も増えてはいません、
あらためて上の棒グラフをよくみると、大阪府がグンと伸びているように見えます。
そこで都道府県ごとの表を確認し、21年に比べて22年に届け出件数が増えたところがどこか探してみます。
同じデータに、21年の第1・2四半期累計と22年の同期間を比較した表がありました。それをみると、
- 東京都 1.5倍(590から890へ)
- 大阪府 2.4倍(177から417へ)
- 北海道 3.3倍(32から106へ)
などとなっています。このほか2倍を超えているのは
青森県。福島県、茨城県、静岡県、愛知県、和歌山県、広島県、徳島県でした。
実はこの中に一番割合が増えテ4.7倍になった県があります。それは和歌山県です。
和歌山が?意外!
と思われたかもしれません。なぜ増えたのかという分析はないので分かりませんが、とにかく1年前と比べて一番伸び率が高かったワースト県は和歌山でした。
とはいっても、3から14になっただけなので、絶対的な数はかなり低いといえます(そもそも和歌山県より届け出件数が低かった県は13しかありません)。
梅毒とはどんな病気か?ポイントをおさらい
国立感染症研究所のデータをちょっと見るだけでも、ここ1-2年で梅毒患者が増えていることが分かりました。
ここで気になるのが、梅毒ってよく聞くけどどんな病気なのかということです。
梅毒は感染からしばらく潜伏期間があった後、症状が現れてからも一時的に症状が消えてしまう時期があるそうです(愛知県ウェブサイトより)。
注意点だけ自分の備忘も兼ねておさらいしておきます。
- 梅毒菌(梅毒トレポネーマ)による感染症
- 梅毒の感染者との性行為で粘膜や皮膚の小さな傷から感染
- 感染すると、約3週間後に性器、肛門、口にしこりや潰瘍ができる。
- その後、4~10週間の潜伏期を経て全身に発疹(ほっしん)が現出。
- 症状はいったん消えるが病気は進行する(症状は現れたり、消失したりを繰り返し)
- 自覚症状がないこともある。
- 感染しているとHIV(ヒト免疫不全ウイルス)への感染率が2倍以上に高まる。
- 感染しても免疫ができないので、完治してもまた感染する。
- 妊娠の可能性がある女性が感染すると、胎児にも感染する可能性。
- (流産や死産、胎児に障害を引き起こす危険性=先天性梅毒)
治療としては抗生物質を数週間(2~12週)飲むのが一般的のようです。
なお、どれくらいで治るかというと第1期で2~4週間、第2期で4~8週。第3期まで進行していても12週前後で治ると考えられているといいます。
コンドームをしても100%感染を防げるわけではないので、関連サイトにはたいてい「不特定多数との性交は避けましょう」とあります(が、そんなの無理なので、ナマは避ける、時々性病検査する、という対応しかないでしょうね)。
さらに詳しい情報は厚生労働省のウェブサイトにQ&Aがあるので目を通してみるとよいかもしれません。